本官も実は「カスハラ」に悩んでいました――。福岡県警は、住民からの妥当性のない申し出や要求に悩む警察官も多いとして、組織的なカスタマーハラスメント対策に乗り出す。11日に指針を発表し、15日から運用を始める。警察組織としては全国初の対応という。
警察官挑発してSNS投稿、嫌がらせも
飲酒状態で警察署を訪れた人が暴言をはいて署に居座ったり、他の行政機関への要求内容を延々と申し立てたり。県警警務課によると、こんな事例は以前からあり、嫌がらせ目的で警察官を挑発し、その様子がSNSにさらされるケースもあった。
こうした結果、警察官の対応が長時間に及び、出動や電話対応といった本来の警察業務に支障が出ていたという。
警部以下にアンケート 「対応に苦慮したことある」8割に
県警は昨年12月、警部以下(警察行政職員を含む)約1万人にアンケートを実施。約8割が対応に苦慮した経験があり、そのうち約4割が意欲の減退や不眠など心身の不調を感じていた――という実情が判明した。
県警は、警察官らの業務負担や精神的負担を軽減する必要があるとして、カスハラ対策に取り組む自治体や企業の例を参考に独自のカスハラ対策を設けた。
説明を果たした上で、①電話や現場では30分②警察署などへの来庁は1時間――をめどに対応打ち切りを判断し、幹部警察官らに報告する。幹部警察官はカスハラにあたるか判断し、電話を切ったり、退去を求めたりすることにつなげる。
このほか、今年度中にすべての警察署に音声対応転送や通話録音機能のある電話を整えるほか、署内への防犯カメラの設置や、動画撮影機能がある機器で現場対応することも検討している。
一方、県警は、警察業務に関わる申し出や要求に対しては「誠実で積極的に、公平な態度で対応する」と強調。該当チェックなど判断の目安などを示したマニュアルを作成し、対応への濃淡が出ないように徹底するという。
カスハラ判断、マニュアル化へ 識者「住民の納得得ながら機能させて」
カスハラに詳しい関西大社会学部の池内裕美教授(社会心理学)は、「警察など公務員組織では、対応にあたる職員が必要以上に頑張る傾向にある。苦情対応で日々の時間やエネルギーを費やし、若い警察官の離職や休職につながる例もある。カスハラ対策は組織の問題であり、職員が組織を信頼して対応できる風土づくりが大切。マニュアルをつくって線引きの基準を示したことは大きい」と評価する。
さらに、「警察がカスハラ対策を取らざるを得ない状況について、住民側の理解を深め、協力を求めるべきだ。警察官という『資源』は限られ、市民が無駄遣いをしてはいけない。健全な警察業務を維持することは、回り回って住民を守り、住みよい街づくりにつながる」と話す。
一方で、「マニュアルによる判断は標準化してこそ意義がある。住民の納得を得ながら機能させなければ、さらなるクレームを招いてしまう」と話す。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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