文・佐々木洋輔 写真・日吉健吾
北海道美深町にある赤レンガ造りのビール醸造所。副原料に白樺(しらかば)樹液を入れた特産ビールをつくる。この日本最北のブルワリーを導いたのは、小説『羊をめぐる冒険』と、ある羊飼いだった。
「札幌から260キロ、大規模稲作北限地、全国で三位の赤字路線……」
村上春樹氏が『羊をめぐる冒険』(1982年刊行)で、そう記した架空の町「十二滝町」。北海道美深(びふか)町は一致する点が多く、小説の舞台ではないかと言われる。主人公は白樺(しらかば)の樹海を抜けて、湖のように広がる草原にある羊の放牧場と2階建ての別荘にたどり着く。そのイメージとぴったり重なる羊の放牧場とペンションがある。
経営する柳生佳樹さん(74)は、北大農学部卒業後、牛飼いになった。80年代、日米貿易摩擦の末の牛肉自由化で、牛牧場は行き詰まる。ある日、柳生さんのもとに、シベリア抑留者だったという男性が現れ、こう告げた。
「羊を飼いなさい」
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86年、美深町仁宇布(にう…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル