10月に開かれた兵庫県相生(あいおい)市と市教育委員会主催の美術展で、市内の書道家の男性が出展した作品「滅び行く町相生」について、市教委が「共感を得にくい」として差し替えを求めていたことがわかった。書道家は「表現の自由の侵害」と応じず、最終日まで展示された。市教委は「市を盛り上げるような作品になるよう期待した」と説明している。
美術展は10月17~20日、市内の会場で開かれ、市内外からの絵画や写真、書など計233点を展示。書道家は過去に市長賞などの受賞歴があり、無審査で作品を展示する「委嘱者」として、事前に教育長名で出展を依頼されていた。作品には毛筆で「文化の発展しない所はやがて衰退して行く運命にある 我が町相生はその典型的な一例である 市長をはじめすべての市民がこの危機的状況を深く肝に銘じるべき時ではないか」としたためられていた。
市教委によると、市展の運営委員会では事前に「内容がふさわしくないのでは」などの意見が出ていた。このため委員長が作品の差し替えなどを依頼し、市教委側も開会日に会場で、翌日夜に自宅を訪れて差し替えを要望した。会期中、市には電話や口頭で「ふさわしくない」など20件ほどの意見が寄せられたという。
浅井昌平教育長は「一般の応募者なら問題ないが、書道家は無審査で展示できるほどレベルも高く、市民の模範となる立場。個人的には題名が『頑張れ相生』など前向きならば内容は同じでも辛口だが問題はなかったと思う」と話す。
書道家側は「これ以上ことを荒立てたくない」として取材に応じていない。(伊藤周)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル