その滝は、標高1千メートル級の山々に囲まれた群馬県中之条町の入山地区(旧・六合〈くに〉村)にある。「殺人の滝」と書いて「さつうぜんのたき」。いかにも物騒な名前だ。自分の目で見てみたいと思い、晩秋のある日、現地を訪ねた。
前橋市の中心街から車で2時間以上。国道405号を野反(のぞり)湖に向かって走り、途中で右折する。くねくねと蛇行する道。車窓いっぱいに山の緑があふれる。スマホの電波は圏外だ。
ようやく「殺人の滝」の案内板を見つけた。車を止め山道を歩く。ガサガサ、ガサガサ……。落ち葉を踏みしめる音が静寂を破る。片側は急斜面。転がり落ちたら助からないだろう。冷や汗が背中を流れた。
耳を澄ますと、どこからか滝の音が聞こえてきた。急坂を一歩一歩、慎重に下りる。やがて、猛烈なしぶきを上げて流れ落ちる「殺人の滝」が見えてきた。
案内板によると、その昔、人…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル