4月に新学期を迎え、制服やランドセル、ノートなどを買いそろえた保護者も多いのではないでしょうか。子どもが小中学校に入学すると、必要なものは多岐にわたります。
でも、本当に納得して購入しましたか。他の学校と比べて、負担が大きいと感じていませんか。
そうした学校にまつわる保護者負担を「隠れ教育費」と呼び、見直しの必要性を訴える活動をする人たちがいます。
埼玉県の小中学校に勤めてきた柳澤靖明さん(42)は、事務職員として働き始めて間もない20代のころ、1人の小学生に年間で給食費4万円、教材費で1万~2万円の保護者負担があることに、「こんなにお金がかかるんだ」と驚いた。
ある家庭では、夫婦で年収が計100万円に届かず子どもを2人育てていた。所得が一定水準に満たない家庭には就学援助制度もあるが、厳しいなと感じたという。
給食費の滞納が続く家庭に就学援助を勧めたら、年収が援助を受けられる基準を2万~3万円上回っていて援助を受けられなかったことも。
憲法26条には「義務教育は、これを無償とする」とある。家庭の経済状況に左右されず、全ての子どもが教育を受けられるようにするためだ。にもかかわらず、文部科学省の「子供の学習費調査」を元にした試算では、公立小6年間では約63万円、公立中3年間では約51万円の保護者負担が発生する。
買った教材が本当に役に立ったのか。別の教材でも代替できたのではないか。方法や使う頻度を教員らと振り返り、見直すようになった。その結果、ある中学校では、年間1万5千円の保護者負担を減らせた。
柳澤さんは「学校のお金の管理を担うのは主に事務職員。変えるきっかけを与えられる、大事な役割があると思う」と話す。
そうした経験をもとに全国で講演や研修をしていたところ、10年ほど前に千葉工業大准教授で教育行政学が専門の福嶋尚子さん(42)と出会った。
仕事や研究を通じて得られた知見や、互いにそれぞれの家庭で子育てをする親として日々感じてきたことを共有するようになった。
2019年に、初の共著「隠れ教育費」(太郎次郎社エディタス)を出版。22年には、沖縄県の公立小中学校で事務職員をしている上間啓史(うえまひろふみ)さん(38)が加わり、「『隠れ教育費』研究室」という公式サイトもオープンさせた。
「研究室」という場所があるわけではなく、個人での活動が多いが、サイトのコラムや連載を目にした全国各地の人から、講演や取材の依頼がひっきりなしに届く。
上間さんは事務職員として、今年度、小学校のカスタネットを公費で買って音楽室に置くことにした。上間さん自身も子どものときは個人で買ったが、授業で使う期間は短い。学校で共有すれば次の学年の子も使えるため、教員らと相談して決めたという。
教員の教材を選ぶ裁量を生かし、教育内容の画一化を防ぐためにも、「無償化や安価なものを買うことが全てではない」と3人は話す。
ただ、「疑問や違和感を、教職員や保護者らで対話してみてほしい」。「研究室」の活動が、「経済的な理由で授業に必要なものがそろえられない、好きな部活動に入れない子どもたちの希望になれば」と話している。(大坪実佳子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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