全国の刑務所が「老人ホーム化」している。高齢の受刑者が増え、バリアフリー化や介助者の確保などの対応に追われているという。受刑者の約2割が65歳以上という高松刑務所(高松市)の現状を取材した。
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「お父さん、勝手に戸を閉めたらいかんよ」
刑務として「介助係」を任されている40代の男性受刑者が、作業部屋を出て自室に戻る途中の高齢受刑者を注意した。
親子ほど年齢が離れているから「お父さん」と呼ぶ。入所前に訪問介護の仕事をしていたといい、手を引いて移動したり、服を着替えさせたり。風呂で体を洗うこともある。介助係は他にも数人いるという。
70代後半の男性受刑者に話を聞いた。数年前に交通事故で足をけがをして、今も歩くと痛む。介助係に手を引いてもらわないと、移動もままならない。入所前は一人暮らしで介助者はいなかったという。出所後は福祉施設への入所を薦められているが、男性は「施設は金がかかる。たばこを買う小遣いもない」と話す。
高松刑務所の65歳以上の高齢受刑者は98人で全体の約2割(8月末現在)。最高齢は80代後半だ。手足の痛みや、難聴など体に不調がある受刑者も多い。
増える高齢受刑者への対応として、高松刑務所は2010年に収容棟の一部をバリアフリー化した。廊下に手すりを設けたり、車いすが通りやすいように段差をなくしたりした。必要に応じて受刑者にオムツを使わせ、立つのが難しい場合は座ってできる作業を担当させる。月3回は民間の作業療法士を招き、筋力が衰えないよう体操も行う。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル