森下裕介、松浦祥子 野口陽、岩沢志気
運転開始から40年超の老朽原発として稼働中の関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)を巡り、地元住民らが求めた運転差し止めの仮処分について、大阪地裁(井上直哉裁判長)は20日、却下する決定を出した。住民側は大阪高裁に即時抗告するかを検討する。
2011年の東京電力福島第一原発事故を教訓に、原発の運転は原則40年とするルールができた。だが、原子力規制委員会の運転延長認可を通れば、最長20年間延長できるという例外規定に基づき、美浜原発3号機は延長が認められた。住民側は「老朽化で重大事故が起きる可能性が高まっている」などと訴え、運転の差し止めを求めていた。
決定は、関電が新規制基準に沿い、40年超の延長で求められる特別点検や劣化状況評価の実施などの対応を行い、原子力規制委から延長を認められたと認定。「40年以上経過していることをもって、新規制基準が定める対策以上に安全性を厳格、慎重に判断しなければならない事情は認められない」と判断した。
また、想定される最大の揺れである「基準地震動」が引き上げられたことについて、関電側は耐震補強工事を行い、機器などのばらつきや不確かさを保守的に考慮しているとし、安全性に問題はないとした。
住民側は、周辺自治体が想定する避難場所や避難経路には大飯原発や高浜原発周辺が含まれるなど避難計画には複数の不備があり、安全性を欠くとも主張していた。だが、決定は、複数の原発で同時多発的に安全機能を失う恐れは「想定しがたい」として、退けた。
決定後、住民側は大阪市内で記者会見を開いた。弁護団長の元民事裁判官、井戸謙一弁護士は「規制委の判断を踏襲する、中身のない決定だ。司法の役割を放棄した」と語った。申立人の一人で、福井県若狭町の石地優さん(69)は「事故があったら、住民と従業員をどう避難させるのか疑問だ。負けたことは残念でたまらない」と話した。(森下裕介、松浦祥子)
運転差し止めだったら「すごく痛い」
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル