2月上旬。能登半島地震の被災地にある避難所に設けられた救護室で、女性が涙ながらに訴えた。
「地震のことを夢に見る。夜、眠れない」
あの日、女性の両親は倒壊した家の下敷きになった。救助を求めたが、津波が襲って来る。逃げるしかなかった。
「『助けて』って言う声が耳に残っている。自分が置いていったという気持ちがぬぐえない」
女性と向き合うのは、精神科医と看護師らでつくる「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」だ。この日は、宮城県から応援で入った東北大災害科学国際研究所の國井泰人准教授が率いるチームが往診した。
「ご飯は食べられている?」「つらかったね」。國井さんは女性の話に相づちを打ちながら状況を聴き、診察を終えると薬を処方した。
全国から応援に入っているDPATは、心のケアが必要だとの情報が共有された被災者を往診しながら、各避難所を回っている。
「想像を絶する体験に加え、長引く避難生活でメンタル面の不調が顕在化しやすい。東日本大震災では、10年経ってからPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した被災者もいた。長期的なサポートが必要だ」と國井さんは話す。
少しずつ信頼築き、ケアにつなげる
震度6強の地震や津波で住宅の4割が全壊し、103人の死亡が確認された石川県珠洲市では、いまも約1300人が避難所生活を続ける。
自らも建物の下敷きになった…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル