7月の記録的な豪雨で被災し、熊本県内の一部区間で運休が続いていた肥薩おれんじ鉄道(本社・同県八代市)が1日、全線で始発から運行を再開した。佐敷駅(同県芦北町)で記念列車の出発式があり、沿線の住民らが再開を喜んだ。
肥薩おれんじ鉄道は八代―川内(鹿児島県薩摩川内市)を結ぶ第三セクター。豪雨によって線路や橋など76カ所、信号など電気設備16件で計約7億円の被害を受け、八代―水俣(熊本県水俣市)間の49・6キロが不通になった。佐敷トンネル(芦北町)は被害が深刻で、土砂が入り口から約250メートル奥まで流入し、入り口付近では高さ約6メートル積もったという。補修工事により8月8日に佐敷―水俣間で運行を再開。10月20日に八代―佐敷間でも工事が終わり、試運転をしていた。
出発式には国土交通省鉄道局長や熊本県副知事ら56人が出席し、県のキャラクターのくまモンも駆けつけた。地元のつなぎ舞鶴太鼓の演奏や葦北鉄砲隊による演武が式典を盛り上げた。出田貴康社長は「災害を乗り越え、これからも皆さんの『動く公共空間』として頑張って参りたい」とあいさつした。多くの住民が見守る中、来賓や地元高校生らを乗せた観光列車「おれんじ食堂」が、鉄砲隊などの進行合図でゆっくりと八代駅に向けて動き出した。
出発式に訪れた保育園送迎運転手の中原慎吾さん(66)=八代市=は「交通手段としてはもちろん、沿線の美しい景色にもおれんじ鉄道は欠かせない。走る列車を見て子どもたちもきっと喜びます」と話した。(屋代良樹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル