外国産のアサリが熊本県産と偽装され大量に流通していた問題では、小売りの現場から「何を信じればいいのか」という声が上がっている。広い海域から取れる水産物の「産地」の表示はどのようになっているのか。
店頭のアサリは「熊本産」→「中国産」に
「小売りとしては、卸業者から購入する際に示される証明書で産地を確認するしかない。書類が偽装されていたとしたら、何のための証明書なのか」。関東で複数の店舗を展開するスーパーの担当者は困惑した様子でこう話した。
これまで卸業者から購入する際に産地証明や育成証明といった書類を確認し、熊本県産アサリを店頭で販売してきた。産地偽装が取り沙汰された1月下旬には取り扱いをいったん停止。現在は卸業者から「中国産」として納入される商品を販売しているという。
証明書類は産地表示の「よりどころ」となるだけに、担当者は「目で見て違いが分かるものならこちらも吟味できるが、アサリはそうではない。証明書を偽造されたら、何を信じていいか分からなくなる」と話す。
海域をまたがった場合のルールは?
産地表示のルールは、食品表示法や消費者庁の食品表示基準で定められている。
今回問題となったアサリの場合、「育った期間が長いところが産地」とすると定めがある。輸入アサリでも、輸入した日付や稚貝と成長した貝の大きさなどを記した書類で、元の産地を上回る長い期間熊本県内で育成されたことが証明できれば、熊本県産となる。ところが今回は、実際には韓国や中国から輸入したアサリを短期間、県内の海に仮置きしただけだった疑いがある。
水産物の場合は一般的に、日本の船がとったら、漁獲水域名での表示が原則だ。例えば、東インド洋でとったものを焼津港で水揚げした場合、「東インド洋」と表示するのが義務で、「静岡県」と表示することはできない(併記は可)。ただし、水域をまたがって漁をする場合など、水域名の表示が難しい場合は、水揚げ港名または水揚げした港が属する都道府県名で表示できる。一方、外国の船が日本の港で水揚げした場合は、漁を行った船が属する国が原産国となる。
外国の船が漁を行い、日本の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル