男性の育休が注目を集めている。政府は先月、取得率を2030年度に85%へ上げる目標を掲げた。
ただ、子育ては育休期間では終わらない。多くの女性が復職後に短時間勤務を選び仕事と育児の両立に悩んでいるが、時短勤務の男性は少ない。
なぜ育休のように注目されないのだろうか。この1年間、時短勤務を取った男性記者(39)が取材した。
取得理由は「いっそ給料が減れば」
東京都に住む団体職員の男性(40)は、毎日午後3時半に職場を出る。5歳の娘と3歳の息子を保育園へ迎えに行くためだ。
昨年10月、時短勤務を取り始めたきっかけは「定時に帰る気まずさ」だ。
以前から保育園のお迎えのため、定時の午後5時に退勤していた。しかし、職場は8時ごろまで残業するのが普通だ。
「いっそ時短で給料が減れば、先に帰る気まずさがなくなるかなと……」
勤め先を辞めた妻が、独立開業する時期でもあった。
実際に時短を始めても、仕事の量はさほど変わらない。深夜や未明に家でやらざるを得ない日がある。夕方以降に設定された会議には出られず、同僚に申し訳なさを感じる。給料は3分の2ほどに減り、家計の心配もある。
それでも子どもと過ごす時間が長くなり、楽しそうな笑顔をよく見るようになった。「時短生活は健康的で、取ってよかった」という男性。下の子が小学生になる3年後まで続けるつもりだ。
育児・介護休業法は、3歳未満の子の育児のため、勤務を1日6時間にできる制度を設けるよう、事業主に義務づけている。
厚生労働省の雇用均等基本調査(21年度)によると、約7割の事業所に育児のための時短制度があった。
そのうち女性の利用者がいた事業所は約17%だが、男性の利用者がいたのは約1%にとどまる。
政府はかつて、時短制度の利用があった事業者に助成金を出していた。しかし、税金の使われ方を検証する行政事業レビューで「効果的ではない」などと指摘があり、15年に廃止した。
岸田文雄首相は3月、子育て政策として、時短勤務中にも育児休業給付を出す方針を示した。ただ、育休のように男性に特化した取得目標や施策は出てきていない。
男性に時短を促す新制度
民間企業では、先進的な取り組みも始まっている。
広島銀行を傘下に置く、ひろ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル