「この国は将来どうなるのか」。漠然とした不安があった、と夫はいう。「野菜ぐらい自分で作る」。そんな暮らしを始めたかった、と妻はいう。木地師になった若夫婦が、能登半島の過疎の集落に移り住んで5年。人と自然の恵みに助けられ、「生きる力」を着々と蓄えている。
ろくろを回し、刃先を当ててひたすら木を削る。武骨な木の塊が、みるみる美しいお椀(わん)に姿を変えていく。大阪出身の田中俊也さん(33)と、青森出身の千恵美さん(31)は漆器づくりの初期工程を担う木地師の夫婦だ。
10年前、技を学ぶ石川県挽物(ひきもの)轆轤(ろくろ)技術研修所(石川県加賀市)で出会った。人が生きるための道具を木から削りだす。その奥深さに魅入られ、ともに職人となって、ふと気づいた。「この仕事、どこでもできるな」
それなら好きなところで生きて…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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