能登半島地震では、多くの寺社も被害を受けた。高齢化が進む檀家(だんか)や氏子も被災し、再建に向けた寄付を頼みにくい。政教分離から行政の支援も期待できない。地域コミュニティーの中心であり、文化の継承に欠かせない寺社の再建は進むのか。
石川県輪島市で、大火に見舞われた「朝市」に近い長楽寺。本堂や庫裏が全壊し、2月下旬になっても撤去作業はほとんど進んでいない。
住職の上野共之(ともゆき)さん(69)は、崩れ落ちた本堂から仏具などを探し出してきたが、本尊は見つかっていない。
寺院は地震保険には加入していなかった。本堂や庫裏が広いため掛け金が高く、入れなかったという。再建には門徒(檀家)の協力が頼みだが、「自分の生活がどうなるかもわからない門徒さんに、寄付を頼むことは、しばらくは難しい」と話す。
真宗王国、地震の前から維持難しく
石川県は、浄土真宗の中興の祖、蓮如(れんにょ)が室町時代に北陸で布教したことから「真宗王国」と呼ばれる。江戸時代には北前船の交易が盛んになり、経済的に豊かになったことで寺の規模が大きくなった。なかでも京都の東本願寺を本山とする真宗大谷派の寺が多い。
同派によると、輪島市や珠洲市など能登教区に353寺あるが、今回の地震で約9割の約320寺に被害があり、うち本堂や庫裏の大規模被害は約70寺に上る。
地域では過疎化が進み、門徒も減少。耐震化されていない本堂も多かった。そこへの地震だ。市仏教会の会長でもある上野さんは「もっと田舎のほうでは、廃寺や合併する寺も出てくるかもしれない」と話す。
寺だけでなく、神社の被害も大きい。石川県神社庁によると、輪島市、珠洲市、能登町、穴水町の奥能登には440社あり、大きな被害が出たという。
能登半島の先端にある須須(すず)神社(珠洲市)は、昨年5月の地震で壊れた建物もあり、復興を進めている最中だった。
元日の地震で社殿の二つが全壊。鳥居は壊れ、こま犬や灯籠(とうろう)も倒れた。
権禰宜(ごんねぎ)の多田千鶴さん(44)は、津波で甚大な被害が出た氏子らが身を寄せる避難所に物資を運ぶ。3月1日からはクラウドファンディングを始め、再建費用や地域のまちづくりに向けた資金を募っている。「地域の人とともに続いてきた神社。地域の文化を守っていくためにも、心のよりどころである神社仏閣が続くように支援してほしい」と話す。
過去の震災では地域コミュニティー施設の再建支援という形で公的な補助が出ました。記事の後半で、支援策を探ります。
内閣府によると、国の被災者…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル