開催中の「あいちトリエンナーレ」について、文化庁が補助金を全額交付しないと決めた。菅義偉官房長官の発言を機に注目が集まったのが、公金と芸術のあり方だ。公権力は内容に介入しないのが大原則。文化庁は「手続き上の理由」を強調するが、「異例」の理屈には疑問の声が上がる。
トリエンナーレへの補助金交付のあり方については、菅義偉官房長官が8月に「事実関係を確認、精査した上で適切に対応したい」と発言。文化人や憲法学者、市民団体などから「権力の介入」として問題視する声が上がる一方、官邸内では展示にいらだつ声が上がっていた。
菅氏は26日午後の記者会見で、「文化庁において事実関係を確認し、審査した結果、全額を交付しないことと決定し、公表したと聞いている」と語り、交付見送りは文化庁の判断だと強調した。
憲法21条の「表現の自由」に抵触するのではないかとも問われたが、菅氏は「国民の税金でまかなわれている補助金の取り扱いに関することなので、文化庁が事実関係を確認した上で、適切に対応するのは当然のことだ」と述べるにとどめた。
今回の政府の対応について、野党は批判の声を上げている。共産党の小池晃書記局長は「憲法が禁止している明らかな検閲だ」と述べた上で、「後から補助金交付を却下するやり方がまかり通るようになれば、主催者は政権の顔色をうかがってやらざるを得なくなる」。立憲民主党の幹部は「文化庁の独断とは思えない。官邸の意向か、忖度(そんたく)でないとこんなことにはならない」と指摘した。
批判は身内の自民党内からも出ている。7月の参院選で「表現の自由」をメインの政策に掲げ、自民の比例候補2位となる54万票を獲得して当選した自民党の山田太郎参院議員は、「このようなことはあってはならない」とツイート。自民党文科族の一人は「表現の不自由展・その後」以外の関連費用も含めた全額が不交付となったことを疑問視し、「事業自体の有用性は認められており、減額しても出すべきだ。そういう折衷案を模索しないあたりが、いまの政権らしい」と語った。(安倍龍太郎)
■「異例だと思う」文化庁の…
980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル