JR稚内駅(北海道稚内市)から歩いて5分ほどのところにある「クラーク書店中央店」。
売り場面積は約330平方メートルで、1万冊以上を取りそろえた街の本屋さんだ。
「日本最北の書店」として地元から愛されてきたが、6月末で閉店することが決まっている。
「本当は去年の年末で閉めようかと思っていたんですが、半年延ばして6月までにしたんです」
そう話すのは、店長の神田雅彦さん(49)だ。
過疎化やネット通販の普及による顧客離れ、暖房に使う灯油代の高騰などが重なり、決断した。
株式会社クラーク書店の創業は1984年7月だが、神田さんが経営するようになったのは2017年7月から。
保険代理店を営む父から「書店を経営している顧客が後継者を探している」と聞いたことがきっかけだった。
フェリー会社に勤めていた神田さんが脱サラして引き継ぐことに。
引き受けた理由は「街の本屋をなくすわけにはいかない」という使命感から……ではない。
フェリー会社で売店の商品企画や運営を担当していたことがあり、経営への興味があった。
父は「やめといた方がいい」と言ったが、本好きな母の「やってみればいいじゃない」という言葉が後押しした。
結果、前の経営者の元で学んだ期間も含めて9年4カ月で幕を閉じることになった。
地方書店ならではの仕入れの難しさや、思った以上に重労働だった本の陳列、雪の中での配達など、思い出すのは苦労したことばかりだ。
最後の「ご褒美」が
閉店に向けて仕入れを減らし、棚が少しずつ空き始めた6月上旬、ある出来事が起こる。
思い返してみると、それは不思議な縁でつながった、最後を締めくくるにあたっての「ご褒美」だったように思う。
舞台は、2カ月前に発表された「本屋大賞」関連の特設コーナー。
入り口すぐの一番いい場所に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル