神戸大学などのチームは、ヒトiPS細胞を使って、脳の一部「下垂体」ができない患者の病気の状態を試験管内で再現することに成功した、と発表した。病気の原因遺伝子のひとつがわかったほか、ほかの下垂体の病気の原因解明や治療法の開発に役立つ可能性がある。
成果は17日、米科学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」に掲載された。
下垂体は脳の一部で、成長ホルモンなど多くのホルモンを出している。生まれつき下垂体がうまくできない異常がある患者では、成長障害や、低血糖といった症状がでるため、ホルモンを一生補充し続ける必要がある。
チームは患者の血液からiPS細胞をつくり、試験管内で下垂体組織にしようとした。ただ、正常なiPS細胞であればホルモンを出す細胞になるのに、患者の細胞では途中で止まってしまい、そうならなかった。
調べると、ある遺伝子の変異で、下垂体の上にあり、下垂体を調節している視床下部という部分から出るはずの、下垂体をつくるのに必要な成分が非常に少なくなっていたことがわかった。
チームは他の下垂体の病気の原因究明や、治療法の開発にも役立つとして、研究を進めている。神戸大医学部の高橋裕准教授(糖尿病内分泌内科学)は「先天性下垂体形成不全の多くは原因不明だが、今回の成果は、原因や、病気のメカニズムを明らかにし、根治療法を見つける第一歩だ。後天性の病気など、様々な応用も可能だ」と話した。(杉浦奈実)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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