憲法53条に定められた臨時国会の召集要求に、内閣が約3カ月間応じなかったことは憲法違反にあたるかが争われた訴訟の判決が13日、岡山地裁であった。野上あや裁判長(奥野寿則裁判長代読)は、要求があった場合、内閣は召集について「単なる政治的義務ではなく、憲法上の法的義務」を負うとの判断を示した。一方、憲法違反にあたるかは判断せず、原告側の国家賠償請求を棄却した。原告側は即日控訴した。
同種訴訟は全国の3地裁に起こされ、昨年6月に那覇地裁、今年3月に東京地裁が判決を出した。3地裁とも憲法判断をせずに原告側の訴えを退けたが、那覇地裁と岡山地裁はともに内閣が召集の法的義務を負うと認め、「違憲と評価される余地はある」とも言及した。
問題とされたのは、野党が2017年6月22日、森友・加計(かけ)学園問題を審議するため、召集を求めた臨時国会。当時の安倍晋三内閣は98日後の9月28日に召集したが、審議には入らず、冒頭に衆院を解散した。
憲法53条は後段で、衆参いずれかの議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会を召集しなければならないと定める。時期についての定めはない。
召集を求めた一人の高井崇志・衆院議員=比例中国=は18年2月、「遅くとも要求から20日以内に召集すべきなのに、長期にわたって放置したのは憲法に違反する」として、国に110万円の国家賠償を求める訴訟を岡山地裁に起こした。
裁判では、内閣の臨時国会の召集について、裁判所の審査対象になるか▽召集要求に長期間応じないのは国会議員の権利侵害にあたるか――などが争われた。
原告側は、内閣によって国会の活動が妨害されており、司法が審査を放棄することは許されないと主張。国会議員として質問や討論をする権利が侵害されたと訴えた。国側は、召集するかは高度な政治的行為であり、裁判所の審査の対象外だと反論。要求した召集が実現しなかったとしても、国会議員個人の権利侵害にはあたらないとしていた。(中村建太)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル