うえはらけいたさん(34)は、広告会社の博報堂でコピーライターとして働いていた。
26歳の時に退職し、多摩美術大学グラフィックデザイン学科で学ぶ道を選んだ。
コピーライターやデザイナーの仕事はやりがいがあった。
優秀な先輩やライバルたちに囲まれて過ごす日々は刺激的だった。
それでも「速く消費されてしまう広告よりも、より長く人々の心に残る作品を作りたい」と、幼いころからの夢だった漫画家を目指すことにした。
大学卒業後、今度はデザイナーとして博報堂にもう一度入ったが、夢との両立は難しく、再び退職。
現在は漫画家1本で生活している。
8月に出版された「ゾワワの神様」(祥伝社)は、博報堂時代の経験をもとに描いた作品だ。
コピーライターとして入社した「ぼく」が強者(つわもの)たちと出会い、体中が「ゾワワ」と震える体験を経て成長していく。
広告系の就活応援サイトに掲載されている連載の書籍化で、実体験をベースに創作を交えながら描いている。
会社員時代に受けたお説教のお裾分けがテーマの一つで、印象的な言葉がいくつも登場する。
「作り手が信じてないものを視聴者が信じるわけないでしょ」
「言葉を書く仕事ではなく本質を書く仕事なんです」
「ありとあらゆる可能性の海を泳ぎ回って、たった1つでいいから自分が信じられるものを見つける仕事なんだ」
数々のセリフの中で、実際に言われて今も心がけている言葉がある。
「自分の作ったものはうんこだと思った方がいいよ」だ。
初めて聞いた時はギョッとしたが、理由を聞いて思わず納得した。
ゾワワの中では、先輩とぼくのやりとりとしてこんな風に描いた。
ぼく「最近打ち合わせで『今…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル