5月に小学6年生と中学3年生を対象に行われた2021年度の全国学力調査の結果が31日、公表された。昨年度はコロナ禍で中止となり、2年ぶりの実施。データの活用や、複数の資料を結びつけて必要な情報を見つける出題の正答率が低い傾向にあった。特徴的な問題や正答率の傾向を、専門家の見方とともに紹介する。(高浜行人、三島あずさ、編集委員・宮坂麻子、同・氏岡真弓)
算数・数学 データの読み取りや記述に課題
算数・数学は、記述式問題の正答率が低く、無解答率が高い傾向がみられた。また、データから必要な情報を読み取り、それに基づいて判断する力に課題がみられた。宮崎大学の添田佳伸教授は「授業でも児童生徒が解き方を詳しく説明するといった機会は増えているが、まだ成果が十分には出ていないようだ」と話す。
小6では、図書室の利用が少ない理由を2学年に聞いた結果のグラフから、2学年で最も差がある項目とそれぞれの割合を、言葉と数を使って書く問題の正答率が52・2%だった。
中3では、砂時計の砂の重さと落ちきる時間を示す表とグラフを用いて、2分間をはかるのに必要な砂の重さの求め方を説明する問題の正答率が、28・2%。日照時間が長い日は気温差が大きい傾向にあると言える理由を、二つの度数分布多角形の特徴を比較して説明する問題の正答率は、11・2%だった。
添田教授は「教室での発表のように、グラフに線を書き込んだりしながら口頭で説明すれば多少言葉足らずでも伝わるが、文字だけで正確に説明するのは難しい。もう少し易しい内容の問題で、書いて説明する練習が必要だ」と指摘する。
国語 目的をもった読み取りや意見もつ力に課題
国語は、スピーチの原稿とメモ、資料を比べる問題(小6)や、各校代表によるテレビ会議での意見や資料の問題、SNSの言葉の使い方についての意見文の問題(いずれも中3)など、これまで以上に、日常の場面で複数の情報から課題を解決する力を問う出題が目立った。
平均正答率は、小6は前回並みだが、中3は8・3ポイント下がりどちらも64・9%。京都女子大学の水戸部修治教授は「もっと低い年もあり中学の力が落ちたとはいえない。ただ小中ともに、内容把握はできるが、目的を持って読み取り、考え、意見を持つ力が低い傾向が見られる。2003年の国際学習到達度調査(PISA)から指摘された課題だが、大きな改善がみられない」と指摘する。
小6の面ファスナーの説明文と図表から開発のヒントと仕組みを記述する問題の正答率は34・6%。中3の校外とのメールのやりとりで使う敬語の問題も40・9%と低かった。水戸部教授は「段落分けして内容をまとめる受動的な授業では対応できない」と指摘。「低学年から調べ学習の土台になる図鑑や本を多く見せ、中学年では新聞など複数資料を比較して意見を発信、高学年で質を高める段階的な授業展開が必要だ」
自宅に本が多い子は……
文部科学省は今回、全国学力調査と同時に行ったアンケートで、自宅にある本の数と、家でどのくらい日本語を話すかを初めて質問した。
本の数は国際学力調査で文化…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル