自死の夫に妻「ようやく良い報告」 市へ賠償命令、15年の思い届く

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宮坂知樹、友永翔大

 新潟市水道局の男性職員(当時38)が自殺したのは上司のパワハラが原因だったとして、遺族が市に約7900万円の損害賠償を求めた訴訟で、24日の新潟地裁(島村典男裁判長)の判決は、上司が「厳しい対応」を改めなかった注意義務違反を認定し、市に約3500万円の支払いを命じた。夫の突然の死から15年余り。パワハラの主張は退けられたものの、妻は市の責任が認められたことに安堵(あんど)の表情を浮かべた。(宮坂知樹、友永翔大)

 男性が2007年5月に自殺したことをめぐっては、地方公務員災害補償基金新潟市支部審査会が11年11月、上司のパワハラが原因として公務災害に認定し、その行為を「著しく理不尽な『ひどいいじめ』」と指摘。訴訟では、内部の聞き取り調査の結果としてパワハラはなかったと否定する市側に対し、遺族側は、市が聞き取り調査で関係職員に圧力をかけ隠蔽(いんぺい)を図ったとも主張していた。

 遺族側は、公務災害の審査で使われた同僚の陳述書を、パワハラがあったとする根拠とした。この日の判決は、同僚から市が聞き取った内容が陳述書と大きく変わっている点を挙げ、同僚が「事実上圧力を感じた可能性の有無を考慮する必要がある」としたものの、同僚が法廷で証言していないことなどから、陳述書を証拠に「採用するのは困難」と判断。ほかに有力な証拠がないため、「パワハラやいじめを認めるに足りる証拠はない」と結論づけた。

 一方、「厳しい対応」や「かたくなな対応」を取る傾向があった上司の影響により、部署は「緊張感のある雰囲気」で、男性は初めての業務なのに周囲に助言を求められなかったと指摘。上司は、男性の仕事の進み具合を確認しながら必要な指導をしたり、部署内の意思疎通を活性化させ、男性が相談しやすい環境を整えたりする注意義務を果たさなかったとした。

 新潟市の中原八一市長は「亡くなられた元職員に心より哀悼の意を表します。判決内容を精査のうえ対応したい」とするコメントを出した。

顔を伏せ、体を震わせて聞いた裁判長の声

 判決を受け、男性の妻(53…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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