黒田早織
まさに自殺しようとする相談者を止めようと自分の名前と電話番号を告げたら除名されたとして、社会福祉法人「神戸いのちの電話」の元相談員で司法書士の男性(70)が4日、処分の無効を求める訴訟を神戸地裁に起こした。会見を開いた原告側は「根拠のない処分で不当だ」と訴えた。
訴状によると、男性は1月、「借金で追い詰められ、今まさに首をつろうとしている」との電話に対応。相手を止めようと自身の名前と電話番号を教えたところ、倫理事項違反に当たるとして7月に同法人から実質的に除名された。
同法人の実務ハンドブックには、倫理事項に「相談員は匿名で活動する」と記載。「関係が私的になることを避け、必要な援助的距離を保つため」などと記されている。だが違反の際の処分などについては特に定めがなく、除名は根拠がなく違法だと男性は訴える。
男性が名前を伝えたのは「債務整理に携わる司法書士として、借金で死ぬ必要はないと説得的に伝えるためだった」とし、「実際に相談者を自殺から引き離せた。『いのちの電話』の目的に合致する対応だ」と主張する。その後相手と連絡を取ったり、司法書士として報酬をもらったりもしていないという。
男性の代理人弁護士は「自殺防止という社会的な役割を果たす組織にもかかわらず、手続きがずさんだ」と指摘した。
同法人は取材に対し、処分を定めた規定はないことを認めた上で、「今回の処分は同法人の『研修委員会』で判断した」と回答。訴訟については「訴状が届いていないのでコメントできない」と述べた。(黒田早織)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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