日本家屋の一室に、ジーパンにシャツを着た細身の男が現れた。「私はIQ133。ロンドンの銀行で活躍した」「東日本大震災の時、私の投資情報を世界の投資家が買った」。「オカモト」と名乗る男はしゃべり続けた。
「確かな投資だと思っていた」。岡山県の70代の男性は声を落とした。3年半前、「オカモト」の話につい耳を傾けたために、老後の蓄えを使い果たした。
「オカモト」らは今年夏、岡山県警に出資法違反容疑で逮捕された。「韓国の金取引市場への投資」を名目に、知人らを勧誘させるマルチ商法の手法を使い、多額の資金を集めていたとみられている。
男性は自身だけでなく、知人らにも出資を持ちかけていた。その話から、多くの人が巻き込まれていった「金投資マルチ」の構図を探った。
「配当率の良い投資があるんやけど、セミナーに参加してみない?」
2018年6月だった。パソコン好きが高じ、地元の人を集めて開かれているパソコン教室の帰り道、男性は昔からつきあいがある知人女性に声をかけられた。
地元の大手企業に約40年勤め、定年退職したばかりだった。妻は介護施設に入っており、持ち家の一軒家に一人で暮らす。
楽しみは、ゲーム感覚で始めた外国為替証拠金取引(FX)への投資だった。たまに利益が出ると面白さにやみつきになった。
老後のお金の心配をせずに過ごしたい。話を聞くくらいなら。そんな軽い気持ちで、セミナーに参加することにした。
約2週間後、指定された会場の日本家屋へ行った。塀に囲まれ、敷地に蔵もある家だった。20畳ほどの和室に通されると、10人ほどの高齢男女が集まっていた。
「オカモト」とは何者だったのか。被害者を加害者にもしてしまう投資マルチの危うさについて、専門家にも聞きました。
そこに「オカモト」が現れた…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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