台風19号の上陸から1週間、1都11県から災害派遣要請を受けた自衛隊は陸海空の指揮系統を一本化した統合任務部隊を3万1千人態勢で編成し、2043人を救助した。16日以降は被災地の生活支援に軸足を移している。猛烈な雨により浸水被害が広範囲で起き、生活支援の長期化が見込まれるため、東日本大震災(平成23年)に次ぐ活動規模になりそうだ。
栃木県佐野市の秋山川西側の住宅街は、堤防決壊で冠水し、水が引いた今も茶色い泥に覆われている。
18日、陸上自衛隊第48普通科連隊の80人が泥の除去作業にあたった。このうち36人は元自衛官で、現在は別の仕事を持つ「即応予備自衛官」だ。
土嚢(どのう)を泥の中からシャベルでかき出し、「せーのっ…」と声を絞り出しながら担ぎ上げ、トラックの荷台に乗せて運び出していく。砂ぼこりが舞う中、黙々と重労働をこなしていた。
普段は障害者支援施設の責任者として働く坂井康哲3等陸曹は「自衛官時代の経験を生かして被災者の役に立ちたい」と語る。
16日以降、即応予備自衛官約80人が各地で入浴や炊き出し、がれきの除去、避難所への物資輸送など生活支援を行っている。「いなければ手が足りない。大きな戦力だ」(同連隊第4中隊長の松本至巨3等陸佐)。元自衛官でなくても教育訓練を受けて任用される「予備自衛官」も近く被災地入りする見通しだ。
防衛省・自衛隊は台風19号に対し異例の態勢で対応した。大規模停電が発生した9月の台風15号を教訓とし、上陸前から大雨特別警報が発令された自治体や東京電力など252カ所に連絡員を派遣した。
海上自衛隊は14日から甲板にヘリコプターを搭載できる最大級の護衛艦「かが」を、16日夜には同「いずも」に交代して福島県沖に配備している。多数の海自ヘリが同艦を発着拠点に、福島、宮城両県などで上空からの行方不明者の捜索や物資輸送を行っている。防衛省によると、こうした護衛艦の活用は東日本大震災以来。自衛隊幹部は「できる限りの態勢を組んで対応していきたい」と語る。(田中一世)
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