中国新聞呉支社に呉市の主婦(33)から電話で相談があった。来春から中学に進み、自転車通学を予定する小学6年の長男(11)が、デザインなどを理由に「ヘルメットをかぶるのを嫌がっている」という。安全確保のためだと説明すると「じゃあ、なぜ高校生はかぶらなくていいの」と問い掛けられたという。確かに自転車通学している子どものヘルメット着用は中学生が目立つ。なぜ、そうなっているのだろう。
▽命と直結、指導進まず
広島県教委によると、昨年4月時点で自転車通学を許可している県内の公立中学校は153校。うち呉市の全10校を含む152校でヘルメットを着用するよう指導している。一方、高校で着用の指導をしているのは1校だけ。明確な理由は「分からない」とする。文部科学省も「各自治体の取り組みでは」と回答する。
交通計画に詳しい広島文化学園大(本部・広島市安佐南区)の今田寛典教授は、バイクでの着用が罰則付きで義務付けられた1975年~86年ごろから中学校で着用を求める動きが始まったと推測する。中学と高校で差が出ている理由については「体力や体格に違いがある。義務教育で保護される立場でもあるからでは」とみる。
広島県警によると自転車が絡む事故は昨年県内で、1383件発生した。4158件だった2002年をピークに減少傾向にあるが、昨年までの5年で39人の死者が出ている。ヘルメットを着けていて大けがを免れたケースもあったという。
今田教授は「海外と違って日本の道路は自転車道がほとんどない上、道幅が狭く、歩道との段差も大きい。中高生を含む子どもが安全に乗れる環境は少ない」と、ヘルメット着用が不可欠だと強調する。
医学的見地からも着用の重要性を指摘する意見が出る。脳神経外科医師で呉共済病院(呉市)の寺坂薫病院長は「頭を守ることは命を守ることに直結する。後遺症を防ぐことにもなるし、頭蓋骨が成長段階の中学生はもちろん、成人でも着用すべきだ」と力説する。
子どもは安全面での必要性は理解しつつも、複雑な思いを抱える。呉市の中学2年男子(14)は「かぶりたくない。形がださいし、臭くなる」と疎む。同市の高校2年女子(16)は「高校でもかぶれと言われたら…。子ども扱いされたくない。髪が乱れるしデザインも嫌」と話した。
自転車通学する中学生に尋ねると、定番となっている、丸く白いヘルメットのデザインを嫌がる声を多く聞いた。自転車専門店には、スポーツタイプなどさまざまな形や色のヘルメットが並ぶが、市教委は「種類は学校に一任している。デザインを選べるというのは聞いたことがない」とする。
鹿児島県は、中学生以下の子どもが自転車に乗る場合、ヘルメットを着用させることを保護者に義務付ける条例(17年施行)を設ける。ヘルメットのデザイン、機能を中学生が自由に選べるようにすることなども含め、子どもも大人も着用が進む環境づくりを地域で考えたい。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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