7月初旬、東京都武蔵野市の幼稚園。10人ほどの年長の子どもたちが机に向かい、傘の絵にカラフルな色を塗っていた。少人数クラスで過ごす自閉スペクトラム症の子どもたちだ。
中でも特に熱心に色を塗っている女の子がいた。「この子にもいろんなドラマがあったんですよ」。加藤篤彦(あつひこ)さん(63)はそう話し、昔の動画や写真を見せてくれた。
入園当初は廊下に寝転がって「ヤダー!」と叫び、大人がどんな声かけをしても耳を貸さない。やっと部屋に入っても無表情で誰とも関わろうとしない。そんな女の子に教職員は根気強く声をかけ続け、周りの子どもたちも遊びに誘った。すると女の子は徐々にクラスの活動に参加するようになり、笑顔を見せるようになった……。
加藤さんが近寄ると女の子はふっと顔を上げ、にまっと笑い、すぐにまた色を塗り始めた。「自閉症の子もそうでない子も豊かな人間関係の中で成長する。笑顔でいられる環境を作ることがとても大事です」
60年近い取り組み 運動会は混合チーム
加藤さんが園長を務める武蔵野東第一・第二幼稚園は、自閉症の子もそうでない子もともに学ぶ「混合教育」を掲げている。今年4月時点で、2園の園児計488人のうち、自閉症の子は66人にのぼる。
きっかけは1964年、幼稚…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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