舞台は博多湾の小島 連載漫画で描く「人の温かさ」

 博多湾に浮かぶ能古島(のこのしま)(福岡市西区)を舞台にした漫画の連載がまもなく始まる。人口160万人に迫ろうとしている大都市の眼前にある小島は人口約700人。福岡市在住の作者は「島に流れるゆったりとした時間や独特の人の温かみを伝えたい」と意気込む。

 12月25日発売の月刊「ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載が始まる作品のタイトルは「ほとめくかかし」。数十年の眠りから覚めた動くかかしのエルザが中学生の朋(とも)と能古島で暮らしていくファンタジー。島にある「のこのしまアイランドパーク」が舞台で、エルザはパークで仕事を見つけようと奮闘する。「ほとめく」は福岡の方言で「もてなす」を意味する。

 作者のたつひこさん(31)は福岡市出身で現在も中央区に暮らす。九州大学漫画研究部の合宿で同パークを訪れ、色鮮やかな季節の花が海を背景に咲くロケーションにみせられた。

 2012年にデビューしたが、福岡が好きで、上京しなかった。これまで3作品の連載を手がけた。いずれも原作があり、作画を担当した。自分でストーリーを考えるのは、この作品が初めてだ。

 動く女の子のかかしのキャラクターの着想を得ると舞台はすぐに能古島が浮かんだ。九大在学中から島民の温かさに触れ、いつかは作品にしたいとの思いをずっと抱いていた。何度も足を運び、取材を重ねた。島を散策中に出会った小中学生は見知らぬ自分にも大きな声であいさつをしてくれた。「やわらかい、ポジティブな作品の舞台にぴったりだ」との思いを深めた。

 同パークも作品に全面協力している。開園から50周年を迎え、18年の来園者数は過去最高の年間約15万人を記録。ただ25%は香港などからの外国人観光客で、日本人は横ばいだという。

 そこで、同パークはサブカルチャーに着目し、今春からコスプレイベントを開くなど集客に取り組んできた。「3年後くらいには漫画の舞台にも」と考えていたが、すぐに実現した。広報担当の山崎浩昭さんは「作品の舞台を訪れる聖地巡礼のお客さんが増えれば、島も福岡も盛り上がる」と期待している。(渋谷雄介)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment