日本海に面した石川県志賀町上野地区の港。2月上旬、ある漁船の「お別れ会」が開かれた。船の名前は「第18八幡丸」。陸に揚げられたままの船の窓は割れ、屋根も壊れている。解体を待っていた。
鍋島仁美さん(43)にとって、突然やってきたお別れの時だった。
つい1カ月ほど前まで、夫の正幸さん(48)が船長として乗り、魚を取り、家族の生活を支えてくれた船だった。
能登半島地震が起こった元日、宝達志水町にある実家で親戚と過ごしていた。夕方、突然下からどーんと突き上げるような大きな衝撃に襲われ、家の外に飛び出した。家は無事だったが、近くのがけに深い亀裂が走っていた。
地震後、港を見に行った人から「船は無事だ」と聞き、安心していた。それが、午後7時半ごろ、別の知人から連絡が入った。
「船がひっくり返っている」
いても立ってもいられず、正幸さんと2人、車で港に向かった。陥没したり崩壊したりした道を迂回(うかい)し、普段の倍近い1時間ほどかかりたどり着いた。網やロープとともに海面に赤い船底が浮かんでいるのが見えた。
「うちの船だ……」
港の底が見えるほどの引き波…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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