石川県の能登半島に1月4日、全長約50メートルの鋼鉄船が流れ着いた。10本ほどのポールにネットが張られ、20個ほどの箱のようなものも掲げられている。船体にはロシア語や「436」という数字の表記がある。漁船にしてはあまりに異様な姿だった。
七尾海上保安部によると、ロシア軍の船によく似たものがあるというが、全容は分かっていない。それは一体どんな船なのか。なぜ能登半島にたどり着いたのか。ロシアの軍事に詳しい小泉悠・東京大学専任講師(国際関係学)に見立てを聞いた。(聞き手・平川仁)
今回漂着したのは、ロシア軍がミサイル射撃訓練の標的にする「標的艦」で間違いなさそうです。船首に書かれた数字「436」は、ロシア軍が一般的に使用している436型標的艦を意味すると思われます。ロシア国防省が公開している海上訓練の映像でも、同様の標的艦が度々確認できます。
ロシアがウクライナのクリミア半島を併合した2014年から、米ロ関係は悪化しています。呼応するように、ロシア軍は軍事演習を活発化させました。特に、昨年の秋以降は、日本海中央部分やオホーツク海周辺で大規模な演習を実施し、一部は米主導の包囲網に直面している中国と合同で実施されました。同時期に、カムチャツカ半島に配備された弾道ミサイル搭載原子力潜水艦の近代化を進めており、それらを日米から守る意図があると考えられます。
20個ほどの箱の正体は?
今回の漂着船は、その際のミサイル訓練で使われたものではないかと思います。そのまま沖合に停泊させていた船が、いかりの鎖が切れるなどして、流失したのではないでしょうか。
船の特徴は、20個以上付い…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル