天王寺夜間中学(大阪市)の休み時間は新型コロナウイルスの感染が急拡大した1月以降、とても静かだ。高齢の生徒も多く、感染には先生も生徒も気をつかう。
だが、普段の休み時間はにぎやか。世間話をする声、笑い合う声。韓国出身の女性や在日コリアンの女性らがお菓子やみかんを持ち寄り、みんなで配り合う。
そんな中でも常にノートを広げ、黙々と勉強している女性がいる。17歳のミカさんだ。
北陸地方で生まれ育った。小学1年の3学期から学校を休み始め、学年を追うごとに欠席が長くなっていった。小4でアスペルガー症候群とADHD(注意欠陥・多動性障害)があると診断された。
小5から特別支援学校に移った。それまでの小学校よりも先生たちは優しかったが、そこでも休みがちで、中等部ではほとんど不登校だった。
例えば家庭科の授業でスプーンを片付けるとき。ミカさんには、隣の子が5本片付けたら同じように5本片付けないといけない、という「こだわり」がある。支援学校の先生たちにも、こうした自分自身の発達上の「特質」は理解してもらえなかった。
高校は県立の定時制に進んだが、通えたのは最初の1週間ほど。すぐに中退した。
その後は主に自宅で過ごした。編み物をしたり、祖父とテレビの「水戸黄門」を見たり。小説も好きで、お気に入りは辻村深月さんの「かがみの孤城」。不登校の女子中学生が主人公の物語だ。
その頃は将来が不安になり、いらだちを母や兄たちにぶつけることもあった。
昨年1月、母の実家がある大阪市内に一家で引っ越した。母がインターネットで見つけてくれた天王寺夜間中学に、4月に入学した。
勉強についていけるか、不安はあった。
だが、それよりも一番心配だったのは「周りの人とうまくつきあえるかどうか」だった。
ミカさんの前の席にいるのは74歳の女性でした。多様なクラスメートに囲まれているうちに、ミカさんにある変化が生まれます。
入学式が終わった午後7時ご…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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