仲代達矢さんは「不毛地帯」「ハチ公物語」など、八千草薫さんと夫婦を演じることが多かった。石川県七尾市の能登演劇堂で舞台「タルチュフ」を公演中の仲代さんが八千草さんの思い出を語った。
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八千草薫さんを最初にお見かけしたのは東宝スタジオでした。僕が映画デビューしたばかりの1950年代半ば、八千草さんは「蝶々夫人」を撮られた頃でした。「こんな美しい人が世の中にいるんだろうか」というのが第一印象でした。
僕は、彼女のご主人だった谷口千吉監督に「裸足の青春」(56年)で抜擢(ばってき)してもらいました。ご夫妻はずっとウチのご近所に住んでおられて、公園などでよくお目にかかりました。だからとても縁があるんです。
その後、映画では随分共演しました。「不毛地帯」「ハチ公物語」「宮澤賢治 その愛」「阿修羅のごとく」……。こうしてみると夫婦役が多かったですね。八千草さんと夫婦を演じていると、本当の夫婦みたいだな、とよく錯覚を起こしました(笑)。何だかその気にさせてくれるんです。
たぶんそれは、八千草さんの演…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル