乾健裕さん(38)
気温1度。吹き付ける冷風をこらえながら、畑でブドウの木の枝を切っていく。苗木も育てているが、苗木からブドウが収穫できるまでは約3年。「地味な作業の繰り返し。実るまでには時間がかかるんです」
特産地の大阪府柏原市で4代続くブドウ農家だ。小さい頃、お盆の時期にはブドウが飛ぶように売れた。小遣い稼ぎに、売り物のブドウを入れる紙箱を折ると、祖父が1箱につき1円をくれた。楽しかった。
だが、冬場に畑を掘り起こし、土や泥にまみれる祖父や父の姿を見るうち、「農家だけはしたくない」と思うように。お笑い番組が大好きだったこともあり、中学生の時にはお笑い芸人をめざすことを決めた。
高校卒業後、吉本興業の芸人養成所「NSC」の門をたたいた。毎年、漫才コンテスト「M―1グランプリ」に挑戦したが、最高成績は2回戦進出まで。ホテルや銀行などでバイトをしながら夢を追いかけたが、10年たっても芽は出なかった。
「10年で売れなかったら辞め…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル