書店や出版、図書館の関係者らが、文部科学省の担当者らと共に、共存の道を話し合うオンライン会議の初会合が3日、あった。書店などから、公立図書館が同じタイトルの本を過剰に持つ「複本」を禁止するよう求める声が上がっている点について、出席者らが意見を交わした。
会議では、出版業者らで作る出版文化産業振興財団(JPIC)の松木修一専務理事が、書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村が昨年9月時点で、全国で26・2%に上ることなどを紹介。減少要因の一つに複本も影響しているのではないかとし、「長年横たわる複本問題を乗り越えていかないと、協力のステージにいかない」と述べた。会議には、作家で書店を営む今村翔吾さんらが出席。「デビュー当初は図書館に助けられたと感じたが、特に直木賞を受賞した『塞王(さいおう)の楯(たて)』に関しては図書館の影響を感じる。一番大切なことは問題を業界の人たちが知ること」と述べた。
一方、日本図書館協会の岡部幸祐専務理事は、複本について、「制限をしてもよいと思っていても、利用者のニーズもある」との図書館の声を紹介。1館あたりの図書資料などの購入費の予算は20年で約3割減ったことも指摘した。同協会の曽木聡子常務理事は「少ない予算をやりくりすることが課題。図書館は今の利用者だけでなく将来も想定した上で、(本を)ストックするのが一つの役割」と説明した。
会議は、急減している書店の支援策として、自民党の議員連盟「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」がこの春出した提言を受けて設置。「(図書館の)蔵書が人気のある本に偏り、多様な世界に接する機会の減少につながっている」と指摘し、書店と図書館の連携促進が盛り込まれた。
次回会合は30日。10~11月に開かれる「秋の読書推進月間(BOOK MEETS NEXT)」のイベントの中で、出版界と図書館界の今後の方向性を示すという。(宮田裕介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment