利根川下流域で唯一の観光渡し船である茨城県取手市の「小堀(おおほり)の渡し」で、約30年ぶりに新船が就航することが決まり、市が20日発表した。3月1日に就航式を開き、この日に限って新旧の船の同時運航を行う。106年前に運航が始まり、往年の水戸街道「取手の渡し」の風情を受け継いできた渡し船が、令和の時代に新たな歴史を刻むことになる。
かつて利根川は水害が絶えず、明治から大正にかけて改修工事が行われて現在の地形になった。工事の結果、小堀地区は利根川によって現在の取手市中心部と分断されることになり、交通の不便を感じた地域住民が大正3年に渡し船を出したのが「小堀の渡し」の始まりだ。
昭和42年に旧取手町営となり、平成11年に取手市営循環バスが運行を開始するまで、通勤、通学や日常生活の足として利用された。13年には観光船として生まれ変わり、希少な渡し船として年約3千人の観光客を集めている。
新船は全長約10メートル、12人乗りで、船名は旧船を引き継ぎ「とりで」と決めた。車いす4台が介助者と一緒に乗ることができるほか、自転車も12台まで載せることが可能だ。風を感じることができる「フライングデッキ」なども整備される。
船体のデザインは、市の鳥・カワセミが水面に映ったときの輝きをイメージしており、市内にキャンパスがある東京芸術大の日比野克彦・美術学部長が担当した。シンボルデザインも制作し、船頭の法被などに使うことにしている。
取手市の増田義男建設部長は「観光客に親しんでもらい取手の風情を知ってほしい。災害時にも物資や人員の輸送で役に立つはずだ」と話している。(篠崎理)
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