政府が今夏にも海洋放出の方針を示している東京電力福島第一原発の処理水をめぐり、放出前から茨城県名物のアンコウ料理の輸出事業で暗雲が漂い始めている。
西村康稔経済産業相が宮城、福島、茨城の漁業関係者と面会してから10日後の6月20日夕。福島県に隣接し、太平洋に面する茨城県北茨城市にある「あんこうの宿 まるみつ旅館」3代目の武子能久(たけしよしひさ)社長(47)にメッセージが届いた。輸出事業などを仲介する商社から、「処理水問題で香港が騒いでいる。今から緊急でオンライン会議がしたい」との緊急連絡だった。
苦難乗り越え、アンコウと茨城の魅力を世界にアピール
まるみつ旅館は、東日本大震災や新型コロナ禍による経営の危機を乗り越えてきた。武子さんは会社や従業員を守るため、1年半前から旅館で提供しているアンコウ鍋などを香港やシンガポール、ベトナムに輸出している。
さらに「アンコウと茨城の魅力を世界にアピールする拠点にしていきたい」と、昨年11月には香港で日本食レストランを営むオーナーと3年間のフランチャイズ契約を締結。香港店の開店に合わせてアンコウ鍋約4千食分、あん肝ラーメン約2千食分を輸出し、6月までにアンコウ料理だけで約1200万円を売り上げた。
順調だった香港へのアンコウ料理の輸出事業。処理水の放出計画で香港の店舗が先行き不透明に。武子さんが考える対策とは。
順風満帆だったが、海洋放出…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル