堀越理菜
ハンセン病患者とされた男性が殺人罪などに問われ、死刑が執行された「菊池事件」をめぐり、再審をめざす弁護士らは10日、再審開始を求める2万8292人分の署名を熊本地裁に提出した。
事件で男性は、隔離された「特別法廷」で裁かれた。元患者たちが起こした国家賠償請求訴訟では昨年2月、特別法廷は法の下の平等に反するなどとして違憲とする判決を熊本地裁が出し、確定した。弁護団は11月、各地のハンセン病療養所入所者や支援者ら全国約1200人を請求人とする再審請求書を熊本地裁に提出している。
署名は今年1月から募ったという。提出後の会見で国宗直子弁護士は「事件がただされなければ、隔離政策は間違いだった、手続きは憲法違反だったという判決を何のために今まで得てきたのか分からなくなる。これまでの判決を受け止めた形で(菊池事件の)裁判がやり直されなければならない。隔離政策を問う集大成になる」と話した。署名は今後も集め、次回は男性の命日にあたる9月14日に提出する予定。
事件について関心を高めてもらうため、再審をめざす弁護団は全12回の連続公開講座をユーチューブで開く。第1回は20日に開き、来年7月まで。弁護士や国立療養所菊池恵楓園入所者自治会の志村康会長らが語るほか、熊本や東京で集会もする予定。受講無料で、アーカイブ視聴もできる。
国宗弁護士は「当時、直接の差別をしたのは一般市民だった。よく知らなかったからというのもあったと思う。そういうことが繰り返されないよう立ち上がっていくことが大事だ」と呼びかけた。(堀越理菜)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル