外国籍住民が半数以上を占める保見団地(愛知県豊田市)で29日、壁の落書きをアートに描きかえる取り組みが完了し、画家や住民らで完成を祝った。新型コロナウイルスの影響で予定していたイベントは中止となったが、共生をめざす団地のシンボルがうまれた。
アートが描かれたのは団地25棟1階の通称「憩いの場」で教室ほどの広さがある。「団地の子たちがどんどん成長するように」との思いを込め
てまっすぐに伸びる花や、多文化共生の表現で様々な国の鳥が描かれた。ブラジルへの移住者が多い沖縄や南米・アマゾンの自然の中で楽しそうに踊る団地住民の絵もある。
これまでコンクリート壁には英語、ポルトガル語、日本語などのスプレーの落書きだらけだった。団地で外国人向けの日本語教室を開くNPO法人「トルシーダ」の伊東浄江(きよえ)代表(62)が壁画制作を発案し、造形作家の中島法晃(ほうこう)さん(40)ら10人のアーティストが参加した。
昨年11月から団地で消しゴムスタンプ作りなどのワークショップを続けつつ、中島さんらが住民と交流しながら絵柄を練り上げ、今月14日から担当エリアを決めて描いてきた。
この日、中島さんは「それぞれの絵は作風やタッチが違うが、少しずつ絵柄がつながるように描かれた。いろいろな国や言葉、考え方の人たちが住み、共生をめざす保見団地そのもので、全部で一つの作品に仕上がった」とあいさつ。団地に住むブラジル人で、アート制作を手伝った矢倉スエリさん(25)は「画家の人たちとコミュニケーションを取りながら描け、思い入れのある作品になった」と話した。
豊田市によると、団地住民約7200人のうち約4千人が外国人で、その9割近くがブラジル人だ。(小山裕一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル