薄い木の板を貼り合わせた美 禅の世界へいざなう「舟」

 鳥のさえずりと虫の音色が響く山間の禅寺。秋にも咲く桜と紅葉に挟まれた不思議な小道の先に、変わった大建築物が現れた。

 全長46メートル、幅19メートル、高さ10メートル。不思議に威圧感はない。むしろ、温かみを感じるのはなぜだろう。

拡大するアートパビリオン「洸庭」の内部では、波と光のインスタレーション作品が上映されている=広島県福山市、上田潤撮影

 広島県福山市の禅寺「神勝寺(しんしょうじ)」の境内。それは17本の柱に支えられ、軽やかに浮いているようだった。

 曲線美に見とれながら近づき、驚いた。全面に薄い木の板が貼り合わせてある。「こけらぶきという伝統技法。59万枚のサワラ材を職人が1枚ずつ貼って建物を包んでいます」。広報担当の熊谷舞さん(42)が教えてくれた。

 2016年に完成した「洸庭(こうてい)」というアートパビリオンだ。モチーフは「舟」。寺が海難事故の被害者を供養するために開かれたことに由来する。地面に敷かれた割り石は「海」という。

拡大する神勝寺「無明院」にある枯山水庭園=広島県福山市、上田潤撮影

 中は真っ暗。瞑想(めいそう)にいざなう25分の映像インスタレーション作品がある。水面が静かに波立ち、かすかな光が反射する。いつしか「意味」を考えるのをやめ、時間の感覚も消えていた。

 「なんかすっきりしました」。外に出て熊谷さんに伝えると、「そういう人、多いんです」。しかし、なぜこれが禅寺に? 「禅って難しいと思われがち。まずは興味を持って訪れるきっかけを作りたくて」と熊谷さん。

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拡大する神勝寺「無明院」にある枯山水庭園=広島県福山市、上田潤撮影

 設計は彫刻家の名和晃平さん(…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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