選挙公報が届かなかった――。昨年10月の衆院選後、福岡県内に住む男性から朝日新聞に電話が寄せられた。すべての有権者世帯への配布が法律で決められているのに、なぜ届かなかったのか。男性が暮らす街を訪ねて背景を探ると、変わりゆく近所付き合いのあり方や、悩む市町村の姿がみえてきた。(神野勇人)
福岡県中央部にあり、かつて炭鉱で栄えた人口約2万2千人の福智町。昨年10月、町内に住む男性(81)の手元に選挙公報は届かなかった。
これまで選挙は欠かさず投票し、国政選挙では選挙公報を見比べて一票を投じてきた。妻はスマートフォンを持つが、男性はインターネットを使わない。やむを得ず新聞とテレビを参考に投票したが、同時に実施された最高裁裁判官の国民審査は「資料がなくて選びようがない」中で、判断を迫られたという。
各候補者の略歴や主張などを載せた選挙公報は、都道府県選挙管理委員会が発行する。公職選挙法によると、国政選挙では発行が義務づけられ、投票日2日前までに各市町村選管が各世帯に届けるよう定める。新聞折り込みなどの配布方法を認め、役場などへ備え置くことで代替する「補完」も定める。
福智町ではこれまで、自治会や町内会の下部組織で地元住民が任意で入る「行政組」の組長に公報の配布を依頼してきた。男性が住む地域で配布した女性(73)に話を聞いた。
女性は「毎月配る町の広報誌…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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