10月31日投開票の衆院選は「投票価値の平等を定める憲法に反する」として、弁護士グループが1日、289小選挙区すべての選挙無効を求めて全国14高裁・支部に一斉提訴した。国会が議員定数の配分や選挙区割りの調整を怠ったことから、最大で2倍超の格差が生じたと訴えている。
東京高裁に提訴した升永英俊弁護士はこの日の会見で、「民意を正確に反映していない国会に正統性はない」と指摘。伊藤真弁護士は「投票価値は誰しも等しく『一票』であることが政治の大前提だ」と話した。
今回の衆院選で、選挙区ごとの有権者(公示前日の10月18日時点)が最も少なかったのは鳥取1区の約23万人で、最も多かった東京13区は2・09倍の約48万人だった。東京13区に住む人の一票の価値は鳥取1区の人の0・48票分で、「国政への発言力」が低かったことになる。
同種訴訟は1962年から弁護士たちが衆参選挙ごとに起こしており、最高裁は76年、格差4・99倍だった72年衆院選を初めて違憲とした。近年は違憲の一歩手前と警告する「違憲状態」が続き、1・98倍だった前回17年衆院選については、国会が人口比例の配分に近づける「アダムズ方式」を導入すると決めた姿勢などを評価して合憲とした。ただ、今回の衆院選に導入は間に合っていない。(阿部峻介)
全289選挙区のうち一票の価値が低い・高い選挙区
順位/小選挙区/有権者数/格差(一票の価値)
1 東京13区 48万2445人 2.09倍(0.48票)
2 東京10区 48万2214人 2.08倍(0.48票)
3 東京9区 48万926人 2.08倍(0.48票)
4 東京22区 48万847人 2.08倍(0.48票)
5 東京8区 47万9076人 2.07倍(0.48票)
6 東京17区 47万7413人 2.06倍(0.48票)
7 東京4区 47万6427人 2.06倍(0.49票)
8 北海道3区 47万5754人 2.06倍(0.49票)
9 神奈川15区 47万4631人 2.05倍(0.49票)
10 神奈川13区 47万3250人 2.05倍(0.49票)
……
280 茨城5区 24万2438人 1.05倍(0.95票)
281 栃木3区 24万1551人 1.04倍(0.96票)
282 長野4区 24万1022人 1.04倍(0.96票)
283 香川3区 24万468人 1.04倍(0.96票)
284 京都5区 23万8977人 1.03倍(0.97票)
285 宮城4区 23万8340人 1.03倍(0.97票)
286 福島4区 23万7897人 1.03倍(0.97票)
287 長崎3区 23万7188人 1.03倍(0.98票)
288 鳥取2区 23万4822人 1.02倍(0.99票)
289 鳥取1区 23万1313人 1.00倍(1.00票)
※格差と一票の価値は鳥取1区との比較。有権者数は公示前日の10月18日時点(総務省まとめ)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル