大阪・北新地の雑居ビルで24人が死亡した放火殺人事件から一夜明けた18日、ブルーシートと規制線が張られた建物前では多くの人が手を合わせ、花束や飲み物を手向けていった。
「事件の後、ずっと胸がざわついていて」
午前10時前に献花に訪れた大阪市の女性(58)は、取材にこう明かした。
女性は普段、障害者の就労を支援するボランティア活動をしているという。就職が決まったり、新たなスキルを身につけたり、利用者たちが自信をつけていく様子を間近で見て、喜びを分かち合ってきた。
いまは「支える側」だが、自身も国の職場復帰支援のプログラムを受けたことがあるという。現場とされる心療内科クリニックでも出火当時、職場復帰などをめざす患者らを対象とした「リワークプログラム」が開かれていた可能性があることを知り、「ひとごととは思えなかった。これから第一歩を踏み出す人が大勢いたはず。心が痛い」と言葉を詰まらせた。
供え物は時間を追うごとに増えていった。亡くなった方々を悼む訪問者の中には、クリニックに通っている人たちもいた。
薬の処方などで通院しているという大阪市の男性会社員(51)は、正午ごろに現場を訪れ、手を合わせた。事件後も安否がわからない院長を気にかけ、「温厚で、尽くしてくれる良い先生だった」と途切れ途切れに話した。
休職中だった5年ほど前、クリニックのプログラムを受けてストレスとの向き合い方などを学び、復職がかなったという。院長に報告すると、「本当によかった。これからじっくり生きていきましょう」と励まされたという。
職場で事件のニュースを知り、「体が震えた」。「先生や、ここで出会った仲間に救われた。まさかこんなことになるとは」と動揺した様子で話した。
今春に2カ月ほど通っていたという奈良県の女性会社員(26)は、職場の人間関係に悩んでいたという。「院長からの助言で転職し、気持ちが楽になった。話しやすい雰囲気で、私の考えを尊重してくれた」と振り返り、花を供えた。(山口啓太、新谷千布美)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル