故郷の茨城県ひたちなか市に耳鼻科クリニックを開院し、先月で5周年を迎えた。白衣を脱ぎ捨て、日々「コスプレ」姿で診察している。診療を通じて患者から笑顔を引き出すことが毎日の楽しみだ。
乾智一さん(40)。所有する衣装は約30種類。人気ゲームキャラクターの「マリオ」やディズニーの「アラジン」、「コンビニ店員」……。ほぼ2週間ごとにコスプレ衣装を替え、患者を迎える。
きっかけは2015年の冬。クリスマスにサンタ姿で診察したところ、思いのほか患者から反響があった。「じゃあもっとやってみよう」と、翌年の節分に「赤鬼」、5月には「金太郎」の衣装を着用した。
患者からは引き続き「楽しい」「明るくていいですね」。その声に押され、ネット通販で衣装を買い、劇団四季のミュージカル「ライオンキング」の衣装を手作り。次第に、普段からコスプレ姿で診察するスタイルが定着していった。
病気になると、どうしても人は「つらい」「嫌だ」と暗くなってしまう。医師や病院にも負のイメージを持たれがちだ。その象徴が「白衣」なのかもしれない。「患者との距離を縮め、病院を笑顔が生まれる場所に変えたい」。一つの答えが、白衣を脱ぐことだった。
病院のモットーは「楽しさ」「感謝」。治療が終わり回復した患者には、コスプレ姿で「おめでとう」と声をかけ、笑顔と拍手で送り出す。(佐野楓)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル