被告人質問の最後で青葉被告が口にした謝罪と後悔 7日に結審予定

 36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第21回公判が6日、京都地裁であった。被告人質問で検察官に「遺族らに思うことはあるか」と問われると、青葉被告は「申し訳ございませんでしたという言葉しか出てきません」と述べ、謝罪の言葉を初めて口にした。

 青葉被告の裁判は三つの段階に分けられ、犯行動機や経緯、刑事責任能力に続き、11月下旬から量刑の審理に入った。被害感情の立証でこの日までに延べ約90人の遺族や負傷者の意見陳述や供述調書の読み上げがあった。青葉被告は「自分より苦しんでいる方がまだいる」「子どもがいらっしゃる方もいて、重く受け止めないといけない」とも述べた。

 謝罪の気持ちがいつ芽生えたのかと聞かれると、しばらく考えた後、「弁護人と面会している時、裁判が始まる前あたり」と説明。これまで明確に述べてこなかったと指摘されると、「こんなにたくさんの人が亡くなるとは思っていなかった。やりすぎだった」との自身の供述に触れ、「『やりすぎ』という形で言っているということ」とした。「やりすぎたという言葉に、申し訳ないという意味が含まれているということか」と確認されると、「そう自分はとらえています」と答えた。

 意見陳述などで多くの遺族らが極刑を求めたことについては、「その通りに、それで償うべきととらえている部分があります」と述べた。

 弁護側は、青葉被告自身が事件で重いやけどを負い、周りの介助を受けてきたとし、心境に変化があったかと尋ねた。青葉被告は「昔ほど徹底的にやり返したいという考え方は減った。早く拘置所に来ていれば、こんな事件を起こさなかったのではないか」と答えた。

 被害者参加制度で裁判に加わる遺族らも直接質問した。京アニ作品「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」のキャラクターデザインを手がけた池田(本名・寺脇)晶子(しょうこ)さん(当時44)の夫(51)は、青葉被告が主張する「京アニによる盗用」が今も許せないのかと質問。青葉被告は「そういう感情は薄れてきた」とし、京アニに対しては「犯罪をやった当初は怒りが残っていたが、今は申し訳ない気持ちが大きい」と述べた。晶子さんや残された息子に向けては「申し訳ない思い」「自分は片親だった部分があるので、やはり申し訳ない」と述べた。

 一方、遺族の代理人弁護士が「多くの死傷者が出ると思わなかったのか」と質問すると、青葉被告は「構造上のせいにするわけではないが、火が早く回りすぎて多くの人が亡くなったと聞き、ツキや運がなかったことも否定できない」と述べた。現場の京アニ第1スタジオの構造をめぐっては、吹き抜けの3階まで続くらせん階段が火の回りを早めた可能性が指摘され、証人の京都市消防局員も「影響がなかったとは言えない」と証言した。

 裁判員6人のうち2人と裁判官も質問し、青葉被告が事件前に住んでいたさいたま市訪問看護を受けていた時期があった点に触れると、「あの時、入院を拒まなければ事件は起きなかったのかなと思う」とした。

 最後に裁判長に「ご遺族に何か声をかけるとしたら」と聞かれると、青葉被告はまっすぐ前をむいたまま、「申し訳ございませんでした」と答え、「他には」と声をかけられると、「やはりそこまでしなければならなかったかという思いがどこかにあります」と述べ、被告人質問が終わった。

 今年9月に始まった裁判は、次回7日に検察側が求刑を明らかにする論告と、弁護側の最終弁論で結審する予定。(光墨祥吾、関ゆみん、山本逸生)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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