広島最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)をめぐり、現存する全4棟が事実上、保存される見通しになった。広島県が所有する3棟に続き、国所有の1棟の耐震工事の実施が固まった。一時は解体論も出ていたが、被爆者の高齢化が進むなかで建物の価値を再考する機運が高まったことが異例の方針転換につながった。
原爆の爆心地から南東2・7キロにある被服支廠は、1913年につくられた国内最古級の鉄筋コンクリート建物。旧陸軍の軍服の製造拠点で、原爆投下直後は臨時救護所にもなった。
築100年を超えて建物の劣化が急速に進む一方、近年になって文化庁や有識者などが「建築史的な価値がある」「国の重要文化財級の価値がある」との見解を相次いで表明。県は昨年に1~3号棟の耐震化方針を国に先んじる形で決め、国所有の4号棟の存廃が残る課題とされてきた。
こうしたなか、4号棟を管理する財務省中国財務局が、県と足並みをそろえる形で事実上の建物保存を行う方針を新たに決めた。
関係者によると、中国財務局は昨年度に劣化状態の調査を実施。建物全体の強度は十分あり、崩壊の危険性は低いとの結論を出した。柱や梁(はり)も、現代のコンクリートと比べて、遜色ない強度だったという。
ただ、耐震性能を示す指標は最も低い場所で、震度6~7程度の地震に耐えられる値を下回り、最低限の耐震補強が必要になったという。ほかに屋根瓦や鉄扉の腐食が見つかったため、瓦は全面的なふき替え、鉄扉は台風に備えた脱落対策も行う必要があるという。
このため、関係者によると…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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