被災の町にチャンスを求めて 移住した糸職人、より合わせる希望

 ずるずるずる。ここでは麺をすする音が、聞こえない。

 福島県双葉町の工業団地に、ひときわ目を引く巨大な工場が現れた。中は機械の轟音(ごうおん)で、会話もままならない。職人の竹森剛さん(50)と渋谷菊夫さん(55)が、カップラーメンだけの昼食をとっていた。2人は糸を作り続けて25年を超えるベテランだ。

 工場を建てたのは、岐阜が本社の撚糸(ねんし)メーカー「浅野撚糸」。2人は製造拠点の移転にともない、昨年12月に移住してきた。工場の立ち上げ作業に追われている。

 「撚糸」とは、糸をよったもの。糸と糸をより合わせれば、様々な特徴を備えた糸ができる。例えばゴムと綿をより合わせると、伸び縮みする線維になり伸縮性のあるジーンズが作れる。

 機械に振り回されるのが仕事だ。製造途中に糸が切れることもあり、機械から目を離せない。さらにいったん機械を動かし始めれば、糸をより終えるまでに2日はかかる。4月の本格稼働に向けて試運転が続く。

 「案外、移住前に想像していたより普通の暮らしができている。だけど、外食できる店が少ないから、自然とカップラーメンが多くなる」と2人は話す。

 なぜ岐阜の企業が福島にやって来るのか?

「無理とは言わない。諦めない。」

 繊維業界全体が高齢化してい…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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