再稼働に向け、原子力規制委員会から27日、事実上、合格とされた東北電力女川原発2号機(宮城県)。東日本大震災の震源地から最も近い原発ながら、震度6弱の揺れと高さ13メートルの津波に耐えた一方、審査期間は申請以来、6年近くに及び、これまでに合格した原発では最長。審査会合も最多の176回に上った。専門家は「被災原発だとしても審査が長すぎる」と懸念の声を上げる。
「震災の影響を受けたプラントだったため、議論を重ね(互いの)共通理解を得るのに時間がかかった」。合格証に当たる審査書案を規制委が了承した後の定例記者会見で、更田豊志(ふけた・とよし)委員長は審査が長期化した理由に「被災原発」という他原発との違いを挙げた。
女川原発は過去の明確な津波データがない中で、869年の貞観地震などを参考に14・8メートルの高台に建設された。そうした慎重な対策が功を奏し、震災では東京電力福島第1原発(福島県)のような浸水による全電源喪失を回避した。
だが、更田氏は「『よく耐えた』という表現がふさわしいと思えない」と厳しい目を向け、津波や地震の対策は「特に丁寧に見た」「保守的(安全寄り)な設定をした」と明かす。
被災原発固有の議論にも時間が割かれ、2号機原子炉建屋の被害調査を実施。コンクリート壁に幅1ミリ未満のひび割れ1130カ所が確認され、ひびが地震によるものなのか、耐震設計上どう影響するのか、などが検討された。
そのほか、東北電が示した施設の耐震性や防潮堤の設計内容や、設計の前提となる地震の揺れの強さや津波高の想定値について、審査側が妥当性に疑念を示すケースも相次いだ。規制委に提出した審査申請書は修正が繰り返され、当初の約1400ページから最終的に1万ページ近くまで増えた。
「事例の性格から(審査に要した時間は)おおむね妥当だ」と更田氏。ただ、東京大大学院の岡本孝司教授(原子力工学)は「世界ではリスクが許容範囲に抑えられているかどうかで安全性を判断するが、規制委はリスクよりも法令に合っているかどうかを見ている。それで事業者と意見の相違が生じ、審査に時間がかかるのではないか。行き過ぎであり、世界標準とは異なる」と指摘している。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース