核兵器禁止条約の批准国が発効に必要な50に達し、広島、長崎で原爆の惨禍を体験した被爆者や支援者は歓迎の声を上げた。一方で、条約に背を向ける日本政府には不満を募らせる。
25日、広島市中区の原爆ドームの前には被爆者や支援者ら200人ほどが集まった。
広島県原爆被害者団体協議会(広島県被団協、坪井直理事長)の理事長代行、箕牧(みまき)智之(としゆき)さん(78)は、条約前文に被爆者の苦難に言及した一節が明記されていることに触れ、「声を出し続けることが大事だと実感した。発効が待ち遠しい」と声を弾ませた。もう一つの広島県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「核兵器を正当とする根拠はなくなった」と強調した。条約推進を訴えてきた署名活動などを振り返り、「一筆一筆に託された願いをもとに核兵器廃絶への道を進んでいこう」と呼びかけた。
「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」共同代表の森滝春子さん(81)は「日本が安全保障の基本とする『核抑止政策』はこの条約に違反している」と指摘した。「戦争被爆国である日本政府が、一刻も早く批准することを求めます」と言葉を強めた。
集会には、広島県の湯崎英彦知事と広島市の松井一実市長も参加。松井市長は記者団に「核兵器廃絶に向けて具体的な議論がこれから始まる。(日本は)締約国会議に参加するべきだ。オブザーバーとしてでも参加するように、来月にも長崎市長と国にお願いに上がる」と語った。
この日、原爆ドームを見に来た広島県東広島市の放課後児童支援員、高橋侑実さん(26)は「被爆を経験した世代の多くが亡くなる中で、原爆ドームなどとともに核兵器の恐ろしさを伝えていく大切な条約。子どもたちにも平和の大切さについて教えられるよう、私自身も学んでいきたい」と話した。
長崎市の平和祈念像前には約200人が集まり「核兵器のない世界に向けた新たなスタートだ」と声を上げた。長崎県被爆者手帳友の会会長の朝長万左男(まさお)さん(77)は集会後、「条約に前向きな姿勢を示さなければ、日本の国際的な評価は失墜する」と指摘した。
集会を呼びかけたのは、国内外…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル