袴田巌さん(87)の再審公判が始まった。1966年11月の初公判で無罪を訴えてから、57年後に再び迎えた初公判。有罪主張を維持する検察側と、全く違う犯人像を描く弁護側が真っ向から対立し、今後十数回の審理が続く見通しだ。
検察側は、静岡地検を主体に再審公判の準備を進めた。東京高検の検事5人ほどが専従でサポートし、有罪立証について地検と高検、最高検の3庁で幹部を含む約20人態勢で検討してきた。
「有罪主張を粛々と行う」。静岡地検の奥田洋平・次席検事は閉廷後、報道陣の取材にそう話した。確定判決で有罪の根拠の一つとされた自白調書を公判に証拠提出しなかった点は「現在の地検の判断として、立証に利用しない」と述べた。
検察幹部は取材に「自白を唯一の頼りに強引に起訴した事案ではない」と説明。袴田さんの犯人性について「相応の疑いがあるのは間違いない」とした。
静岡県警は「答える立場になくコメントは差し控える」と答えた。静岡県警の幹部は取材に「当時を知る人は県警にもういない。裁判を見守るしかない」と漏らした。
秀子さんと巌さんの弁護団も閉廷後、記者会見を開いた。
秀子さんは、初公判で行った陳述について「巌は無実だから、無罪と言うしかない。最後はね、やっぱり声が震えてきた。自然に声が震えてきた」と振り返った。今後の意気込みを尋ねられ、「あと11回だろうが15回だろうが、頑張って参ります」と力を込めた。
弁護団の田中薫弁護士は「待ち焦がれた日を、巌さんと一緒に(法廷で)迎えられなかったのは残念だ」。10人以上の弁護士が順番にマイクを握り「検察側の冒頭陳述は57年前と変わっていない」などと批判した。
記者会見は、支援者たちも見守った。傍聴した安間孝明さん(65)は「巌さんの人生を取り戻す歴史的な瞬間に立ち会えた」と話した。(菅尾保、本間久志)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル