村上友里
1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)=釈放=の再審開始を認めた東京高裁の決定について、弁護団は17日、最高裁への特別抗告をしないように求める申入書を、東京高検に提出した。期限が20日に迫る中、断念を求める声は広がりを見せている。
13日の高裁決定は、犯行時の着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕の色の変化を検討し、衣類は捜査機関による捏造(ねつぞう)証拠の可能性が高いと認定。袴田さんを有罪とした確定判決には「合理的な疑いが生じた」と判断した。
弁護団「合理的な抗告理由ない」
弁護団は、袴田さんの年齢などをふまえ、「さらに審理を継続させることは無用の負担と苦痛を与える」として、抗告断念を求める活動を連日続ける。この日の申入書では、特別抗告ができる憲法違反や最高裁判例違反にはあたらないと改めて指摘し、「検察官は過去の過ちを認めて正していくべきだ」と訴えた。
再審請求では、最高裁が血痕の色の変化に争点を絞って審理を高裁に差し戻した経緯がある。弁護団の小川秀世弁護士は会見で、「最高裁の宿題に応えた決定で、特別抗告しても最高裁が判断を変えるにはハードルがある。検察側には衣類が袴田さんの犯行着衣だと裏付ける証拠はなく、合理的な抗告理由を書くことはできない」と強調した。
ボクシング協会も支援
弁護団がウェブサイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で始めたオンライン署名では、17日現在で断念を求める署名が約3万件集まった。
元プロボクサーの袴田さんを支援する日本プロボクシング協会の袴田巌支援委員会も「ツイッターデモ」を展開し、「検察は特別抗告を断念して下さい」などのハッシュタグを使って拡散を呼びかける。
超党派の国会議員の連盟も15日に法務省に申し入れを行うなど、多方面で運動が広がっている。(村上友里)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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