村上友里
静岡県で1966年にあった強盗殺人事件で死刑判決が確定した袴田巌さん(86)が裁判のやり直しを求めた再審請求審で、差し戻し後の東京高裁は、再審開始の可否について3月13日に決定を出すことを決めた。当事者には午後2時ごろ、結果を伝えるという。
静岡地裁は2014年に再審開始を決定したが、東京高裁が18年に一転して再審請求を棄却。最高裁は20年、「犯行時の着衣」とされた衣類についた血痕の色の変化に争点を絞って高裁に審理を差し戻した。
新規・明白な証拠にあたるか
衣類は袴田さん逮捕の約1年後、働いていた工場のみそタンクから見つかった。元々の裁判で袴田さんの物と認定され、有罪の根拠になった。弁護側は再審請求で「血痕には赤みが残っているが、1年間みそに漬かれば黒褐色になる。逮捕後に第三者が投入した疑いがある」と訴えてきた。
差し戻し後の高裁の審理では、法医学者らの証人尋問のほか、検察側が血液をつけた布を約1年2カ月間みそに漬ける実験を行った。高裁はこれらを踏まえ、衣類の血痕の色が確定判決を疑うに足る「新規・明白な証拠」にあたるかを判断する。
弁護団「最終決着」期待
高裁の決定後も、弁護側、検察側のどちらかが特別抗告し、再び最高裁に舞台が移ることも予想される。ただ、ベテラン刑事裁判官は、最高裁が一度争点を絞って差し戻した経緯を踏まえ、「最高裁は今度は、高裁の審理に手続きや証拠の評価の明らかな誤りがないかを検討するにとどまるのではないか」と指摘。「その意味で高裁決定には重みがある」と話す。
弁護団も「最高裁からの宿題に答えた。再審開始決定だと信じているし、これが最終決着になるだろう」と期待を込めた。(村上友里)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル