民事裁判を提訴から判決まで全面的にIT化する内容の答申案を法制審議会(法相の諮問機関)の部会が28日まとめた。訴状などのオンライン提出や、口頭弁論などへのウェブ会議での参加を可能とすることが柱。裁判の迅速化や利便性の向上に加え、国際紛争への対応強化を図る狙いがある。
2月に予定される法制審総会での答申を経て、法務省は民事訴訟法などの改正案を今の通常国会に提出する方針。セキュリティー対策も講じたうえで2025年度の全面実施を目指す。
原則「書面」「対面」、海外から敬遠
答申案によると、裁判所に持参や郵送をする必要がある訴状や準備書面の提出方法を見直し、ネットを通じて裁判所の専用システム上でできるようにする。これらの書面を相手方に郵送するなどしている送達手続きでは、提出の通知を受けた相手方が自分でシステムにアクセスして閲覧・ダウンロードする「システム送達」を導入。何もしなくても通知から1週間が過ぎれば送達されたと見なす。
また、口頭弁論の手続きを裁判所に行かず映像と音声によるウェブ会議で行えるようにする。証人尋問も、証人が遠くに住んでいる場合などに加え、新たに年齢や心身の状態から出頭が難しい場合や当事者に異議がない場合にも、同様に可能とする。裁判官は従来どおり法廷で手続きを進め、審理の傍聴もできる。
裁判官が紙に署名・押印して当事者に郵送するなどしている判決文は、電子データで作成してシステム送達を可能にする。準備書面や書証なども含む裁判記録を紙で裁判所ごとに保管している現状を改め、電子化して一元管理し、閲覧・ダウンロードをシステム上でできるようにもする。
日本の民事裁判は「書面」と「対面」が原則で、米国や中国、韓国などの諸外国と比べIT化が遅れている。外国企業は日本での裁判に消極的とされ、取引上のトラブルなどをめぐり他国の法制度下で争うのを余儀なくされる日本企業も少なくない。政府は17年に閣議決定した成長戦略にIT化の推進を盛り込み、国民の利便性や紛争解決における国際競争力などの観点から検討。これも踏まえ、法制審では20年から議論が行われてきた。
7カ月で終結の新制度に懸念も
民事裁判の全面的なIT化を盛り込んだ28日の答申案で、法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、7カ月以内の短期間で裁判を終える新たな制度の創設も提示した。終結までの期間を民事訴訟法に基づく制度として見通せるようにすることで、裁判を利用しやすい環境を整えたい考えだ。ただ、「権利が制限される」などと懸念する声もある。
新制度は、当事者の申し出や…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment